ホットライン相談から見える職場の状況

[コラム] 2016/10/25

日本労働弁護団は,1993年から労働トラブルホットライン(電話無料相談)をスタートさせました。以来,相談日には大変な数の電話相談が寄せられています。

私がホットラインを担当するようになったのは2009年からですが,2016年までの7年間に私が受けた相談だけを見ても,相談内容の移り変わりから職場の状況が変わっていくのを感じます。

2009年から数年間は,職場いじめ・パワハラや過重労働のため鬱病などのメンタル疾患に罹患し,そのために休職中の方からの相談がどんどんふえていました。現在でも休職中の方からの相談は依然として多いのですが,個人的には,一時期の爆発的増加状況よりは,多少落ち着いたように思います。この4,5年で労働者のメンタルヘルスへの配慮や心の健康保持を促す法律や裁判例が立て続けに出された成果かもしれません(この法律や裁判例の形成に,各地の労働弁護団の会員の活動が大きく寄与したことは言うまでもありません。)。

ここ数年,代わって目につくようになったのは,若い世代からの「辞めさせてくれない」という相談です。今辞められたら会社に影響が生じるから損害賠償するぞなどと脅して辞めさせない,後任が見つかるまでは辞めさせない,といった事例が目につきます(いずれも辞められます。)。ベテランの先輩弁護士からは,昔は「辞めさせてくれない」という相談は考えられなかったと聞きました。少子高齢化が進み,使用者からすると,安く使えて,しかも若い労働者の確保が難しくなっていることを反映しているのかもしれません。

ホットライン相談は,無料で電話で相談できるという手軽さから,職場の生の声,リアルな状況をいち早く弁護士が知ることのできる相談方法だと思います。今後も,これまで通り,日々新たに職場で起きているトラブル・理不尽に対し,いち早く対応できるホットライン体制を継続していきたいと思います。

弁護士 河村洋