事件相談検討会で画期的な判決を発見

[News] 2017/09/21

 

労働弁護団東京支部は本部で行っている判例研究会とは別に、発表者が自ら担当している担当した事件の発表と事件係属中であれば今後の対策を考える事件相談検討会を開催しています。9月8日には年1回の多摩支部地域での事件検討会多摩パブリック法律事務所で行いました。

甲斐田弁護士が担当した事件はパワハラで退職を余儀なくされたという事件で、退職金と退職による逸失利益を請求しました。

就業規則に計算方法で明記されていない退職金の支払いを獲得したほか(裁判所はなかなか認めませんので、大きな勝利と言っていいと思います。)パワハラの慰謝料として100万円と弁護士費用10万円を認めさせました(暴行を伴うような事案でなければ、比較的高額と言ってよいと思います。)。

甲斐田弁護士は、逸失利益の主張に際して、愛知県警の退職強要事件(名古屋高判平成25年4月25日3か月分の逸失利益を認めた)を引用して戦ったのですが、逸失利益に関しては認められませんでした。

セクハラについては退職を余儀なくされたとして給料相当額の逸失利益を認めた判決は多数ありますが、パワハラについては、裁判所は具体的な理由を示さずに排斥することが多く、愛知県警事件は画期的な判決です。

しかし、愛知県警事件は調べたところ、いくつかの判例データベースには掲載されているものの判例雑誌等には掲載されておらず、その価値が理解されずに埋もれてしまっていた裁判例でした(私から労働判例に送りました。)。

当事者の希望やそもそも担当者がその価値を理解していないなどの理由で埋もれてしまっている裁判例は多数あります。似たような被害に悩む労働者のためにも判例の勉強を続けていくとともに、価値ある判決は広く社会に知らせていく努力が重要と改めて思いました。

弁護士 増田 崇